ウェブサービスの料金を仮想通貨で匿名で支払う

WireGuard を試してみたくて、試しに Mullvad VPN を契約してみたのですが、その支払い方法が、興味深かったので、仮想通貨での支払いを試してみました。

Mullvad VPN のサイトには、仮想通貨での支払いに対応しているにも関わらず、「匿名による支払いを希望する方は、封筒に現金を入れて送ってください」と書いてあります。未だに、現金が最も匿名性の高い支払い手段というのは、ちょっと面白い話です。

一方、仮想通貨の匿名性はどの程度なのでしょうか?

仮想通貨の匿名性

仮想通貨の取引は、全てブロックチェーン上に永続的に記録されるので、完全な透明性を持っています。分散システムなので、改ざんも不可能です。そのため、仮想通貨での取引は、その仕組み上、隠すことが出来ません。その一方で、仮想通貨の取引には、個人情報が紐付かないので、プライバシーは完全に守られます。

日本などの FATF 加盟国では、政府の規制により、KYC(Know Your Customer) 、及び、AML(Anti Money Laundering) が義務付けられています。この規制により、仮想通貨の取引所を利用するためには、本人確認が必要で、個人情報が仮想通貨の取引に紐付けられるようになっています。これによって、日本での仮想通貨の支払いは、匿名で行うことが出来ません。

AML ルールによって、犯罪の疑いのある資金の流通を防ぐというのは重要なことです。しかし、KYC ルールによって、本人確認を行うことが必要かどうかというのは、プライバシーと透明性のバランスの観点から、仮想通貨が誕生するずっと前から、議論の的です。(ビットコインの誕生は 2009 年ですが、FATF の誕生は 1989 年です)

仮想通貨での取引を隠す一つの方法は、オフチェーンといって、ブロックチェーン以外での取引を行って、追跡を逃れることです。取引所は、オフチェーンのシステムの代表的なものですが、KYC/AML の義務化により、追跡を逃れることが出来ません。しかし、海外の幾つかのサービスでは、non-KYC での交換が可能ですので、それを使うことで、匿名での支払いが可能になります。

仮想通貨の流出事件が国内でも海外でもありましたが、ハッカーは、仮想通貨だと確実に足がついてしまうので、規制のない海外の取引所やダークウェブを用いて、オフチェーンで通貨をスワップし、追跡を逃れました。(犯人から盗まれた通貨を交換した人は、ブロックチェーン上で追跡可能ですので、何人か捕まっています。仮想通貨は完全な透明性を持っています)

もう一つの方法は、coin mixing や CoinJoin という手法によって、仮想通貨の取引の難読化を行うことです。これらは、自分のコインを、他の利用者のコインと混在させてから、同額のコインに交換するものです。取引はブロックチェーンに記録されますが、複数の利用者の入金と出金が混在されるため、入金と出金を対応させることは困難です。

coin mixing は中央集権的な仕組みであるのに対して、CoinJoin は非中央集権的な仕組みで、面白いです。CoinJoin は有志が集まって、自分たちでシャッフルするので、その手続きはトラストレスであり、検証可能です。つまり、取引所やミキサーと違って、胴元に騙し取られたり、シャッフルが不完全だったりなどのリスクがありません。

実際に匿名で支払ってみる

匿名における支払いは、公正な利用に限り、価値があります。違法な目的での匿名性の利用は、容認されるものではありません。例えば、書類を送る際に、中の見えない茶封筒に入れるのは、プライバシーを確保するために必要であり、このような公正な利用において、匿名性を利用することは正当な権利です。

まずは、国内でも海外でも構わないので、BTC を購入します。私がよく使うのは BitFlyer です。

BTC を手に入れたら、Godex.io という取引所で、別の通貨にスワップします。この取引所は、KYC をプライバシーの観点から良い規制とは考えていない取引所で、メールアドレスも本人確認も要りません。スワップの情報は一週間で削除されることが明記されています。(non-KYC の取引所ですが、AML はあり、不正なコインの受け取りは拒否されるとされています)

Godex.io で、BTC を BCH にスワップします。このオフチェーンにより、ブロックチェーン上の追跡が途切れます。Godex.io 上の BTC と BCH のスワップの履歴は、一週間で削除されるとされているので、これが本当であれば、追跡する手段はなくなります。(第三者の監査が有る訳ではなさそうなので、確実に削除されるかや、厳格にログが残らないかは、保証できません。これが中央集権的なシステムと、トラストレスなシステムとの大きな違いです)

BCH のウォレットは、Electron Cash を使いましょう。スマホのアプリの殆どは、クラウド型のウォレットなので、セキュアかもしれませんが、プライバシーはありません。Electron Cash は SPV 型のウォレットであり、自前でノードに繋ぎに行くので、第三者に情報が漏れることはありません。Electron Cash は、CashShuffle という CoinJoin 実装がデフォルトで入っていますので、これで匿名性を担保できます。tor プロクシもデフォルトで入っています。(CashShuffle も tor も設定から ON にする必要があります)

手に入れた BCH を、Electron Cash のウォレットに入れて、CashShuffle を ON にします。暫く待つと、入れたコインが、バックグラウンドでシャッフルされ、適度な大きさのプライベート・コインに交換されます。これにより、このウォレット内のコインは匿名性の高いものになります。(仕組み的に、この交換には数回の送金が必要になるので、270 Satoshi の送金手数料が、その回数分だけ消費されます)

最後に、このプライベート・コインを使って、支払いを行えば、仮想通貨の匿名での支払いは完了です!

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